「所得制限」についてご存知でしょうか?
児童手当や高校無償化など、子育て支援に所得制限があるのはよく知られているので、
聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
実は、子育て支援以外にも所得によって対象外になる制度や、税金負担が多くなる制度がいくつもあります。
制度のことは知っていても、所得制限のことまで解説されることは少ないので、なかなか知る機会がないかもしれません。
実際に私は多くの所得制限に該当する世帯ですが、よく見かける情報に当てはまらないことが多いので、情報を目にしたときは自分の世帯が対象かどうか自分で判断しています。
この記事では、FP2級の資格を持っている私が、所得制限が設けられている制度について詳しく説明します。
この記事を読むと、次のことが分かります。
- 所得制限が設けられている制度
- 所得制限を受ける年収・所得
- 基準の所得を超えるとどうなるか
ぜひ最後まで読んで、制度について詳しく知ってください!
所得で制度を利用できなくなるもの
所得制限によって、制度が利用できなくなるものを解説します。
年収によって段階的に支給額が減少して最終的に制度の対象外となるものと、
基準の所得を超えた時点ですぐに制度の対象外となっているものがあります。
児童手当
所得制限の中で、一番世の中の関心が大きいのが児童手当ではないでしょうか。
世間から反対の声が大きく、2024年の10月から所得制限が撤廃される予定ですが、現時点ではまだ所得制限によって支給額が段階的に減額されています。
例)子ども2人、配偶者の年収が103万円以下の家庭の場合
年収の目安 | 児童の年齢と児童手当の額(一人あたり月額) |
年収960万円未満 | 3歳未満 一律15,000円 3歳以上 小学校修了前 10,000円(第三子以降は15,000円) 中学生 一律10,000円 |
年収960万円~1200万円 | 一律5,000円 |
年収1200万円以上 | 支給なし |
児童手当の所得制限反対の声が多いのは、下記の3つの不平等があるからです。
- 所得制限を受けている家庭は納税している額も多いこと
- 世帯収入ではなく世帯主一人の収入で判断されること
- 子どもの人権
2022年10月の制度改正で年収1200万円以上には「支給なし」が開始となりましたが、反対の声により約1年で所得制限の撤廃がほぼ決まりというところまで変わりました。
配偶者控除
学生や主婦の方が「一年で103万円以上稼ぐと扶養から外れる」という話を聞いたことがありませんか?
他にも「106万円の壁」「130万円の壁」など、扶養内で働く収入には「これ以上稼ぐと手取りが減る」という本人の収入に対する基準が設けられています。
しかし扶養には、パートで働く本人(ここでは奥さんとします)だけでなく、納税者(この場合は旦那さん)の収入の条件があるものもあります。
扶養には下記の2種類があり、
- 税法上の扶養…扶養を外れると、納税者(旦那さん)の税金額が増える
- 社会保険上の扶養…扶養を外れると、社会保険や年金を自分で払うことになる
納税者(旦那さん)の年収の条件まで定められているのは税法上の扶養です。
納税者の所得が900万円を超えると節税できる金額が減少し、所得が1000万円になると、たとえ奥さんの収入が0円だったとしても配偶者控除は受けられなくなり節税効果がなくなる。
つまり、旦那さんの税金が増えて手取り額が減ってしまいます。
旦那さんの所得が1000万円以上の家庭は、103万の壁ではなく106万の壁や130万の壁を気にすればOKです。
特別児童扶養手当
障がいのある20歳未満のお子さんを育てる保護者が受けられる手当で、障がいの等級によって金額が変わります。
等級 | 支給月額 |
1級 | 53,700円 |
2級 | 35,760円 |
特別児童扶養手当は両親の一方だけでなく、配偶者や同居の祖父母・兄弟の所得にも制限があるのが特徴です。
子ども2人と、配偶者の年収が103万円以下の家庭の場合、世帯主の収入が約770万を超えると受給資格がなくなります。
手当の金額が大きいので、支給されるかされないかで生活への影響が大きいですよね。
障がいのあるお子さんを育てる家庭は、車いすや通院などの費用をまかなおうと一生懸命働いていらっしゃると思いますし、
付き添いや介助で思うように仕事もできないと思います。
働くことやお金の使い道に制限が多い家庭のお金にまで制限をつけるのはなぜでしょう。
しかも770万円という基準は他の所得制限と比較しても低いので、該当する世帯も多いのではないでしょうか。
児童手当と同様に、早急に所得制限が撤廃されるといいなと思います。
高校無償化(高等学校就学支援金制度)
高校の授業料の負担を軽減する制度です。
所得制限は世帯収入での判定なので、共働きの場合は両親二人の収入が対象です。
また、公立と私立でも支給額が変わります。
両親・高校生・中学生の4人家族で、両親の一方が働いている場合の所得制限を見てみましょう。
支給額と所得制限 | |
公立 | 年間118,800円(年収910万円まで) |
私立 | 年間39万6,000円(年収590万円まで) 年間118,800円(年収910万円まで) |
年収910万円までであれば、私立でも公立でも年間118,800円が支給されます。
「高校無償化」と呼ばれていますが、この制度で無償となるのは授業料のみということには注意が必要です。
近所の高校生のおうちに話を聞いたところ、私立は部費や備品など授業料以外の部分が何かと高額になりがちとのことです。
助成があるのは大変ありがたいですが、それ以外の出費も考慮した志望校選びが必要です。
子ども医療費助成制度
子ども医療費助成制度は、子どもの医療費が無料になったり、1回当たりの受診料に上限が定められている制度です。
国ではなく自治体の政策のため、受診料の自己負担額や所得制限の有無は地域によって様々です。
私は今まで、無料の自治体と、1回あたり数百円という上限が決められている自治体に住んだことがありますが、どちらも所得制限はありませんでした。
所得制限が撤廃される自治体が増えているようですが、今もまだ所得制限が設定されている自治体も多いようです。
必要なときに躊躇なく受診できる安心感と、子どもの権利の公平性のためにも、所得制限がなくなるといいなと思います。
財源が厳しければ、完全無料ではなく1回数百円を上限にして全員が支払うようにすればいいのではないでしょうか・・・
住宅ローン減税
住宅ローン利用者の所得税や住民税を控除する制度で、住宅ローンの年末残高に対して0.7%の減税を受けられます。(控除期間13年間)
たとえば、年末に住宅ローンの残高が2000万円だった場合、所得税が14万円減額されます。(所得税がそれよりも少ない場合は住民税からも減額します。)
条件:住宅ローンの返済期間が10年以上あること
所得税を計算するときの所得が減る「所得控除」ではなく、所得税がそのまま減額される「税額控除」なので、節税効果がとても高いです。
住宅ローン減税は所得が2000万円を超えると制度を利用できなくなり、所得制限の中ではかなり基準が高いものです。
該当する人も少なくなりますので、所得制限があることは伝えられず、全員が使える当たり前の制度のように伝えられていることが多いかもしれません。
所得によって自己負担が増額になるもの
所得制限によって制度を利用できなくなるのではなく、段階的に自己負担が増える制度を解説します。
高額療養費制度
病気や怪我で医療費が高額になった場合に金銭的負担を軽減する制度で、収入によって自己負担の金額が変わります。
高額療養費制度を使うことで、年収に応じた自己負担金額になるように払い戻しを受けることができます。
「医療費が高くなっても自己負担は月10万円くらいだから、医療保険はいらない!」
という話を聞いたことがある方もいるかもしれません。
しかし、年収によって自己負担金額が違うので、年収が高いほど負担も大きくなります。
たとえば、病気で治療や入院で合計100万円の療養を受けた場合、3割負担の30万円を病院に支払ったあとに年収に応じた金額が払い戻しされます。
年収600万円と1000万円の自己負担金額を比較してみましょう。
- Aさん・年収600万円の[計算式:8万100円+(医療費−26万7,000円)×1%]
- 8万100円+(100万円−26万7,000円)×1%=8万7430円
- 窓口で30万円支払ったあと21万2570円払い戻しされ、自己負担は8万7430円になる
- Bさん・年収1200万円[計算式:25万2,600円+(医療費−84万2,000円)×1%]
- 25万2,600円+(100万円−84万2,000円)×1%=25万4200円
- 窓口で30万円支払ったあと4万5,800円払い戻しされ、自己負担は25万4200円になる
年収の差は倍なのに、医療費の自己負担は約3倍になります。
収入でなく手取りにするとAさんとBさんの差はさらに小さくなるので、Bさんの手取り収入に占める医療費の負担はさらに大きくなります。
いくら自己負担金額に上限があるとはいえ、月25万円以上の支払いは年収が高い人でも簡単に出せる金額ではないと思います。
(連続する場合は4ヶ月目以降の自己負担が少なくなります)
「医療費の自己負担は10万円」という話を聞いて安心していた方は、この機会にご自身の自己負担の上限を調べてみてはいかがでしょうか。
所得制限がある制度のまとめ
今回は、身近にある所得制限が設けられている制度について解説しました。
所得制限によって手当を受けられないことで、年収が高い場合でも使えるお金が少なくなることがたくさんあるということをお伝えできたかと思います。
世の中にある情報は、制度の説明だけで年収制限があることまでは解説されないこともあるので、平均以上の年収がある方は制度に対して「所得制限はないのか?」と毎回調べるのがおすすめです。
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